マラソンやトレイルランニングの競技力向上に取り組んでいると、徐々にトレーニング効率について考えるようになります。
特に若い頃はある程度マラソン練習もごまかしがきいたのですが、年齢を重ねると緻密なトレーニング計画に基づいてトレーニングしないと厳しくなってきました。
そのため、日頃どの様なトレーニングがタイム向上に最も効果的なのか考える必要があり、成果を出している人から話を聞いたり、ランニングの専門書で勉強する中で見えてくるものがありました。
それは、マラソンも結局はトレーニングの原理原則に基づいているということです。
このトレーニングの原理原則は、自分自身の競技力向上への取り組みだけでなく、トレーナーとして活動する中で選手のパフォーマンスを向上させようとする中で基本となる考え方です。
これらの原則を正しく実践すれば、年齢を重ねてしまってもある程度の競技力は維持または向上できると感じます。
私自身、この年齢でも上位入賞することが出来ているからです。
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本記事ではトレーニングの原理原則の観点からマラソンの競技力向上について解説したいと思います。
トレーニングには原理原則がある
マラソンに限らず、特定のスポーツでパフォーマンスを向上させようとすると、トレーニング負荷(もしくは頻度)を徐々に向上させる必要があります。
マラソンを走られている方は感じておられると思いますが、タイムを向上させたいのであれば、ある特定のペースで走ったときに、より楽に走れるようになっていなくてはなりません。
これはマラソンだけでなく他のスポーツや筋トレでも同じです。
以前ではできなかったウエイトを持ち上げられる様になったり、負荷が同じであった場合でもセット数が以前よりも増やせるようになった時にそのトレーニングの効果があったということです。
これらの例はトレーニングの効果があったと言える現象の例ですが、全てトレーニングの原理原則に基づいているのです。
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そのトレーニングの原理原則には以下の7項目があります。
・過負荷の原理
・継続性の原理
・特異性の原理
・全面性の原則
・漸進性の原則
・個別性の原則
・意識性の原則
以下で定義を解説していきます。
過負荷の原理
過負荷の原理とは、パフォーマンスを向上させたいのであれば、身体が経験したことのない負荷を経験させる必要があるということです。その結果、その負荷に合った身体が構築されるのです。
マラソンのタイム向上を目的とした場合であれば、ウインドスプリントやショートインターバルなど、可動域を広げる動きを入れることにより速く走る為の筋力をつけるということです。
動きの大きな走りをすることでストライドが伸びるのです。
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よく400m×10本のショートインターバルを入れた後のペース走が楽に感じるのはこの過負荷の法則があるからです。
マラソン以上の速いペースを身体に経験させることは「過負荷」にあたります。その結果早く走る為の身体が構築され、マラソンペースが楽に感じることに繋がるのです。
この繰り返しだけでマラソンのタイムは向上しませんが、過負荷の原理を元にトレーニングを複合的に組み合わせることがトレーニングにおいて重要です。
継続性の原理
次に継続性の原理です。
これは名前の通り、継続してトレーニングを入れるべきだということです。
マラソンのトレーニングは、ある設定でトレーニングをこなせていたとしても、それが身になっている力量なのか否かは分かりません。
例えば12000mのペース走を3分30秒ペースでできたとしても、既に3分20秒設定で出来る選手が久しぶりにこの練習をこなせているのと、ほぼレースという位置づけでたまたま調子が良くてこのトレーニングをこなせていたのかどうかは分からないということです。
つまり、この3分30秒設定のトレーニングがレースで使える実力になっているのかどうかは分からないということです。
つまり、トレーニングを自分の血肉とするには、継続してトレーニングした上で得たものでなくてはレースでの再現性は低いということです。
マラソンのトレーニングは継続して最低でも効果が出るまで3ヶ月~6ヵ月は必要です。じっくりと腰を据えてトレーニングしましょう。
その期間が短すぎて、短期間にトレーニングを詰め込み過ぎると胡椒にもつながるので、トレーニング→回復の流れを繰り返しながら走力を向上させるのが良いでしょう。
特異性の原理
特異性の原則とは、トレーニングにより得られる効果はそのトレーニングの種類によって変わるということです。
つまりマラソンの競技力向上であれば、走る練習が効果的だということです。
マラソンのトレーニングであれば、やったトレーニング刺激は相応に発達するが、やっていないものは発達しないということです。
例えば5000mに必要な筋持久力をつけるのであれば、400mや1000mのインターバルトレーニングやスピードトレーニングは不可欠です。
速い動きのトレーニングを入れることで神経伝達系が発達し、動員できる筋繊維量に変化が出てきます。
400mや1000mの設定ペースが早ければ早いほどいいのかというとそういうものでもありませんが、全くこれらのトレーニングを入れずにレースに挑んでも記録は出ません。
マラソンで3時間を切ることが目標であれば、3分20秒設定のペース走を3日に1度出来る必要はないのです。(出来たら間違いなく3時間は切れますが)
身体が適応可能な様々なトレーニングを継続して行うことの方が重要です。
クロストレーニングを利用することはありますが、これはマラソンで必要な競技力を共通して強化できる場合に有効だということです。(リカバリーでクロストレーニングとしてバイクトレーニングを行う場合はここでは除きます。)
全面性の原則
全面性の原則とは、競技力を向上させたければ、必要なトレーニング要素を均等に入れる必要があるということです。
ダニエルズのランニングフォーミュラで言うところの、Eペース、Tペース、Mペース、Iペース、Rペースのトレーニングを満遍なく行うということです。
実際にやっておられる方は既に感じると思いますが、使う筋肉群が全く違うんです。
LSDに至っては、地面からの反発をもらえない状態で走るので、自分の筋力のみで進むことになります。
よって以外にも翌日筋肉が疲労していることが分かるかと思います。
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この様にたかがランニングでも、ペースによって使う筋肉も異なれば、心肺機能、代謝系にかかる刺激も少なくなります。
よって様々なトレーニングを満遍なく行う方がトレーニング効率としては効率的だということです。
なぜならマラソンは全身の筋肉を動員し、高い心肺機能が必要で、脂質を優先的に使用できる代謝経路が必要だからです。
トレーニング刺激のネットワークを構築するイメージで様々なトレーニングに取り組んでみましょう。
漸進性の原則
次に漸新性の原則です。
ある程度のトレーニング強度に慣れてきたら、負荷に慣れてきて成長が見込めなくなってきます。
その対策として、身体が慣れてきたら新たなトレーニング強度でトレーニングする必要があるということです。
これはマラソンを例にとると、トレーニングに対して徐々に身体を適応させるということです。
つまりいきなり高い負荷もしくはボリュームでのトレーニングを入れるのではなく、消化できる負荷のトレーニングを体になじませるように徐々に入れるということです。
これはダニエルズのランニングフォーミュラのマラソンのトレーニング方法にも具体例が登場しています。
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ダニエルズのランニングフォーミュラのマラソントレーニングで、13週目以降のトレーニングを例にとると、Tペースでのランニングが週に2回登場し、別の週にはTペースでのランニングを1回入れて、Mペースでのランニングが1回入っているといった感じです。
これはどういうことかと言いますと、週2回無理なくこなせるトレーニングスケジュールが好ましいということです。
設定を思い切って上げても、週に1回出来るかできないかのトレーニングでは意図が変わってきてしまいます。
インターバルであっても、Tペースでのトレーニングであっても、しっかり消化できるトレーニングでなくてはなりません。
漸新性の原則に則ってトレーニングを継続させることも、オーバートレーニングで怪我をすることも避けることが出来るのです。
マラソンでのトレーニングの漸新性とはそういうことです。
個別性の原則
個別性の原則とはその人に合ったトレーニングを適切に入れた方が効果的だということです。
個人によってトレーニングで鍛えるべき能力は異なります。例えば年齢、性別、スピードの有無、スタミナの有無などです。
マラソンで解説するならば、力量に合ったトレーニングをすべきだということです。
例えばトレーニングの設定はその人に合った内容にしないと効果がありません。
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同じように乳酸性作業閾値(LT値)を向上させる目的のトレーニングであっても、あるペースが力のある選手にとってはMペースになることもあるのですが、ランニングを始めたばかりの選手にとってはインターバルになってしまうこともあるのです。
この様にトレーニング刺激はその選手に合ったものでないと目標達成に向けて効果的なトレーニングだとは言えないということです。
意識性の原則
意識性の原則とは、競技力向上の為には漫然とトレーニングするよりも、目的やトレーニングのポイントを明確にして取り組む方が効果的ということです。
マラソンで解説するならば、目的を明確にされた上でトレーニングするのとそうでない場合だと、効果に差が出てくるというものです。
例えばヒルトレーニングは非常に負荷の高いトレーニングですが、トレーニング前に目的を聞かされるのとそうでないのではモチベーションも意識するフォームも変わってきます。
トレーニングを開始する前に、その日がヒルトレーニングで、目的は筋持久力を向上させること、下半身の動きをサポートする腕振りの強化だと伝えられていれば選手のやる気も変わってきます。
ただやらされるトレーニングは修行になってしまうだけで、身にならないことが多いのです。
ランニングの指導に当たる方は、必ずその日のトレーニングの目的を明確にするようにしたいです。
マラソンにもトレーニングの原理原則は当てはまる
これまでマラソントレーニングには様々な取り組みをしてきました。
その中でも効果のあったものと、そうでないものがあります。練習日誌を見て効果のあったものを見ると、現在トレーナーとして活動する中で勉強してきた理論に基づいているものが多いと感じます。
各トレーニングメニューで自分に合ったペースを把握する
ただ、マラソンの場合はトレーニングの設定が非常に難しいのが現実です。
ここを理解できずにトレーニング負荷を誤るときつい練習でも目的としているトレーニング効果は低くなってしまいます。
ランナーあるあるですが、「これ、ペーランなのかレぺなのかわかへん。。」ってやつです。
私は以前、朝5時スタートの神戸の練習会に参加していました.
内容は15000m走るペース走で、Aチームは3分20秒ペース、 Bチームは3分45秒という設定でした。
ランナーは真面目で向上心の高い方が多いので、どうしても3分20秒の速い組にチャレンジしようとしてしまいます。
これが成長を阻害する罠なのです。
過去であれば行けたペースでしたが、現在の私にとってTペーストレーニングとして適切ではありません。
もはやレぺティションです。
これは特に集団でトレーニングする際に発生しがちな現象です。
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集団で走ると、人によってどのペースがトレーニング刺激として適切なのかが違ってきます。
例えば大学駅伝部の様に、ペース走でほぼレースペースに感じるきつさの選手と、かなり楽に走れる選手の両方が同じトレーニングをこなす場合がありますが、この場合は選手の力量によって練習の意味合いが違ってきてしまうのです。
トレーニングを最適な内容にすべく、自分に合ったペースでトレーニングすることを心がけましょう。
トレーニングを期分けする際に注意すること
トレーニングを期分けする際には、内容が偏らないようにトレーニングすることがポイントです。
走り始めたばかりの選手であれば、まずは長い距離をゆっくりでもジョギング出来る身体を作るべきですが、 既にトレーニングを始めている方は組み方に注意する必要があります。
それは、全面性の法則に則ってトレーニングを組むということです。
私たちはどうしても同じ種類のトレーニングに偏ってトレーニングしがちです。
例えばペース走であっても、自分なりにペース走の課題が出来たら次はその課題をクリアしようとペース走ばかりやってしまう場合があります。
しかしこれはトレーニング効果から考えるとあまり効率的ではありません。
ペース走を終えたら次の週は別の要素のトレーニングを入れるなど様々な刺激を身体に入れるべきなのです。
よってトレーニングを期分けする際は、満遍なく様々なトレーニングを入れることと、期間によってトレーニングボリュームを分ける方がおすすめです。
レースまで時間のある場合はトレーニング量を増やす必要があるので、トレーニングの設定よりも頻度を上げるのです。
また、様々なトレーニングを年間通じて入れていく中で、スピードを重視した期間と、スタミナを重視した期間を分けることもおすすめです。
まとめ
今回はトレーニングの原理原則について解説しました。
マラソンやトレイルランニングのトレーニングで今一つ効果が出ない時には、これらの原則を意識してトレーニングに当たってみてください。
どうしても自分の得意なトレーニングに私たちは走ってしまいがちですが、そんな時はこの原則に立ち返ってトレーニングスケジュールを組むのがおすすめです。
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