いよいよエントリーしたレースまであと少し!装備や心の準備など色々あるかと思います。
そんな準備の中で皆さんは高低図をどのくらい確認しているでしょうか?
ロードレースであれば、距離とペースからある程度レースを組み立てることができます。
しかし、トレイルランニングではそうはいきません。
同じ10kmでも、走りやすい林道が続く10kmと、急な登りや下りを繰り返す10kmでは、かかる時間も身体への負担もまったく違います。
そのため私自身トレイルのレースでは距離だけを見るのではなく、
高低図から「どこで時間がかかりそうか」「どこで走れそうか」を考えることで
コースの難易度を予測することを大切にしています。
以前は大会公式サイトの高低図を印刷し、エイドや距離、補給する場所などを書き込んでレースに持っていく方法をよく使っていました。
現在はGARMINなどのGPSウォッチでもコースや高低差を確認できるようになり、レース中に得られる情報はかなり増えています。
それでも事前に高低図を見ることの重要性は変わりません。
むしろGPSウォッチが便利になった現在だからこそ、事前にコース全体を把握するための高低図と、レース中に現在の状況を確認するGPSウォッチをうまく使い分けることが大切だと感じています。
この記事では、トレイルランニングにおける
・高低図の見方
・レース戦略への使い方
・紙の高低図の作り方
・GARMINとの使い分け
など私自身の考えを交えながら紹介していきます。
| 著者:千坂 充宏(SAMURAIGEL開発者) マラソンと並行してトレイルランニングに取り組み、ショートからロングレースまで幅広く出場しています。 主なレース実績 ・比叡山インターナショナルトレイルラン 50mile 6位 ・富士登山競走 山頂コース 3時間21分 ・各務原アルプストレイルランニングレース 優勝 ・別府大分毎日マラソン 2時間46分48秒 YouTube|マウンテンランニング研究所 |
トレイルランニングで高低図が重要な理由
まず高低図が重要である理由です。
トレイルランニングでは、距離だけを見てもレースの難しさは分かりません。
例えば次のエイドまで10kmだったとします。ロードで10kmなら、自分の走力からおおよその所要時間を予測できます。
しかしトレイルでは、その10kmがほぼ下りなのか、大きな山を一つ越えるのかによって、所要時間は大きく変わります。
さらに、登りの傾斜やアップダウンの回数、路面状況、標高、林道などの走りやすい区間がどの程度あるのかによってもペースは変わります。テクニカルな下りが多いコースであれば、下りだからといって必ずしも速く進めるわけではありません。
だからこそ、トレイルレースでは「何km走るのか」だけを見るのではなく、
その距離の中にどのような高低差があり、自分がどこで時間を使うことになるのか
まで確認しておく必要があります。
そこで役立つのが高低図というわけです。
トレイルランニングの高低図で見るべきポイント
次に高低図で見るべきポイントです。
これは単純に大会公式HPにある「累積標高○○m」という数字だけを確認するのでは不十分だと思っています。
私がレース前に確認しているのは、大きな登りがどこにあるのか、その登りがどのくらい続くのか、長い下りや走れそうな区間はどこなのか、そしてエイドがどこに設置されているのかといった部分です。
特に私が確認するのは疲労しているレース後半にどの程度の登りが残っているかです。
例えば同じ40kmのレースでも、前半20kmで大きく登って後半は下り基調になるコースと、最後まで何度もアップダウンを繰り返すコースでは、走り方はまったく変わってきます。
後半に大きな登りが残っているのであれば、前半の走れる区間で必要以上に脚を使わないという判断もできます。
逆に大きな登りを越えた後に林道や下りが続くのであれば、そこからしっかり走れるように脚を残しておくことも重要です。
高低図を見る目的は単純に「山が何個あるか」を確認することではなく、
自分がどこで頑張り、どこで抑え、どこから走るのかを考えるために見るもの
だと思っています。
高低図からレース戦略を考える
高低図からレース戦略を考えることができます。
これは入賞を狙う場合でも完走を狙う場合でも重要なポイントです。
実際に高低図を見たとき、私はまずコース全体をいくつかの区間に分けて考えます。
例えば、「スタート→大きな登り→下り→走れる区間→エイド→後半の大きな登り→ゴール」というコースだったとします。
この場合、スタート直後から周囲につられてペースを上げる必要はありません。最初の大きな登りでは無理をせず、下りでも脚を使いすぎない。その後に走れる区間があるのであれば、そこではしっかり走り、後半の大きな登りに備えるという組み立てができます。
さらに後半の登りに入る前には補給しておくなど、高低図を見ることで補給についても事前に考えることができます。
もちろん、実際のトレイルでは予定通りにいかないこともあります。路面状況や天候によって想定より時間がかかることもありますし、思っていた以上に脚を使ってしまうこともあります。
それでも、
・この先に大きな登りがある
・この登りを越えれば走れる区間に入る
という情報を知っているだけで、レース中の判断はかなり変わります。
高低図は、完璧なレースプランを作るためというより、レース中に判断するための材料を事前に増やしておくものと考えると分かりやすいと思います。
エイド間は距離ではなく「行動時間」で考える
高低図を見るうえで、私が特に重要だと思っているのがエイド間の考え方です。
例えば「次のエイドまで10km」と聞くと、それほど遠く感じないかもしれません。しかし、その10kmに大きな登りが入っていれば想像以上に時間がかかります。
反対に下りや走りやすい林道中心なら、同じ10kmでもかなり短時間で進むことができます。
だから私は次のエイドまで何kmあるかだけではなく、次のエイドまで何時間かかりそうかという行動時間という視点で考えるようにしています。
これは給水や補給を考えるうえでも重要です。
次のエイドまで1時間程度なのか、2時間以上かかるのかによって、必要な水分やジェル、固形食の量も変わります。
例えば次のエイドまで8kmしかなくても、その間に長い登りがあって2時間近くかかるのであれば、その前のエイドでそれなりの水分と補給を持って出る必要があります。
逆に距離は長くても走りやすい区間であれば、想定より早く次のエイドへ到着できることもあります。
トレイルでは距離と時間が必ずしも比例しません。そのため、高低図を見ながら「エイド間を何時間で移動するのか」を考えておくことが、補給計画を立てるうえでも重要になります。
高低図から補給するタイミングを決める
高低図はペース配分だけでなく、補給するタイミングを考えるためにも使えます。
例えば、この先に長い登りが控えている場合、登り始めて呼吸が激しくなってからジェルや固形食を摂ろうとしても、なかなか食べられないことがあります。
そのため私は、長い登りに入る直前など、まだ身体に余裕があるところで先に補給しておくことがあります。
反対に、走れる区間ではペースを上げることに集中してしまい、補給を忘れることがあります。走れているときほど「まだ大丈夫」と感じやすいのですが、そこで補給を後回しにしてしまうと、その後の登りで急にエネルギーがなくなることもあります。
そのためトレイルでは、ロードレース以上に「10kmごとに補給する」といった距離だけを基準にした方法では対応しにくいと感じています。
距離だけではなく、経過時間・高低差・次のエイド・この先のコースまで見ながら補給する。高低図を事前に確認しておけば、「この登りに入る前に1回補給しておこう」といった計画も立てやすくなります。
補給量の考え方や、ジェルと固形食をどう使い分けるかについては、別の記事で詳しく紹介しています。
紙の高低図を作ってレースに持っていく方法
以前の私は、トレイルレースに出るときに紙の高低図を作って持っていくこともありました。
GPSウォッチが進化した現在では少し昔ながらの方法に感じるかもしれませんが、今でも十分使える方法だと思っています。
まず、大会公式サイトなどからコースの高低図を用意します。その高低図に、エイドの位置、エイド間の距離、大きな登りや下り、補給予定、関門時間など、自分がレース中に確認したい情報を書き込んでいきます。
ここでポイントなのが、エイドの距離だけを書かないことです。
例えば「第2エイド・25km」だけではなく、「第1エイドから約2時間」というように、
自分なりに予測した所要時間も書いておきます。
そうするとレース中に高低図を見たとき、
「次のエイドまであと10km」
だけではなく、
「ここから大きな登りがあるので、あと1時間半くらいかかりそうだ」
という判断ができます。
必要な情報を書き込んだら、小さく印刷してレース中に携帯します。雨や汗で濡れる可能性があるので、ラミネートしたり透明な袋に入れたりして、防水できるようにしておくと安心です。
単なる大会の高低図でも、自分に必要な情報を書き込むことで、自分専用のレース戦略表として使えるようになります。
紙の高低図には今でもメリットがある
GARMINなどが普及した現在では、「わざわざ紙を持つ必要があるのか?」と思うかもしれません。
ただ、紙には紙のメリットがあります。
一番大きいのは、コース全体を一度に確認できることです。
GPSウォッチは現在地周辺の情報を見るのには非常に便利ですが、小さな画面で40km、50km、100kmといったコース全体を把握するのには限界があります。
高低図を表示させることもできますが、そこにエイドを書き込むことはできません。
紙なら、「今はコース全体のこのあたりにいて、この先に大きな登りがあと2つ残っている」といったことを一目で確認できます。エイドや関門時間、補給予定なども一緒に書いておけば、ウォッチとは違った情報の確認方法として使えます。
また、紙なら当然バッテリー切れもありません。
特に100kmなど長時間になるレースでは、GPSウォッチのバッテリーや機器トラブルの可能性も考えられます。その意味でも、バックアップとして紙の高低図を持っておく方法は今でも使えると思っています。
GARMINならレース中にも高低図を確認できる
以前と比べて大きく変わったのがGPSウォッチです。
現在はGARMINなどのGPSウォッチに事前にコースを登録することで、レース中にも現在位置や進行方向、現在地を含めた高低差などを確認できます。
これはトレイルではかなり便利です。
例えば長い登りを走っているとき、「この登りはいつ終わるんだろう」と思うことがあります。そこで高低差を確認できれば、「まだ登りが続く」「もう少しでピーク」といったことを判断できます。
これが分かるだけでも走り方は変わります。
まだ登りが長いのであれば少し抑える。もうすぐ終わるのであれば、登り切った後のことを考えながら少し頑張る。登りの後に走れる区間があるのであれば、そこでしっかり走れるように脚を残しておく。
こうした判断をレース中にできるのがGPSウォッチの大きなメリットです。
精神的にも、終わりが分からない状態で延々と登り続けるのと、「あと少しで登りが終わる」と分かっている状態ではかなり違います。
私が実際にGARMINへコースを入れてトレイルでナビゲーションを使った方法については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
GARMINで高低差を確認できるのであれば、「レース前にわざわざ高低図を確認する必要はないのでは?」と思うかもしれません。
私はそうは考えていません。
GPSウォッチはレース中に現在の状況を確認するためには非常に便利ですが、レース全体をどう走るのかを考えるためには、事前に高低図を見ておいた方がいいと思っています。
大まかな流れだけでも頭に入っていれば、レース中の判断はかなり変わります。
GARMINを見て初めて「こんな大きな登りがまだ残っていたのか」と知るのでは遅いこともあります。特に前半で脚を使いすぎてしまった後にそれを知っても、どうすることもできません。
だからこそ、事前に高低図でレース全体を把握し、レース中はGARMINで現在の状況を確認する。この組み合わせが現在では使いやすいと思っています。
まとめ|高低図はトレイルレースの戦略マップになる
トレイルランニングでは、単純な距離だけでレースを考えることはできません。
そのため高低図を見ながら、どこで登るのか、どこで走れるのか、次のエイドまでどのくらい時間がかかるのか、そしてどこで補給するのかまで考えておくことが重要です。
高低図は単にコースのアップダウンを見るためのものではなく、トレイルレースをどう走るのかを考えるための戦略マップとして使うことができます。
皆さんも是非高低図を活用して快適にトレイルを駆け抜けてみましょう!
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