マラソン後半の失速を防ぐには「スピード刺激」が必要!ロング走だけでは足りない理由を解説!

    マラソンの準備といえば、多くのランナーがまず取り組むのが「ロング走」です。

    週末に30km走を行い、持久力を養い、フルマラソンを想定した練習を積み重ねていく——。

    このアプローチは非常に効果的で、実際、完走やサブ4を目指すランナーにとっては欠かせないトレーニングでもあります。

    しかし、こんな経験はありませんか?

    ・30km走は問題なくこなせるのに、本番では35kmから急にペースが落ちてしまう

    ・ロング走を繰り返しているのに、なぜか記録が伸びない

    ・脚が残っているつもりでも、ラスト5kmで思うように動けない

    このような悩みを抱える市民ランナーは少なくありません。

    実はその原因は、単なるスタミナ不足ではない可能性があります。

    ポイントとしてはスピード刺激、つまり「無酸素的なトレーニング」です。

    本記事では、ロング走だけでは届かないマラソン後半の粘りを支える「無酸素トレーニング」について解説します。

    なぜ短い距離のトレーニングが必要なのか?

    それによってどんな変化が得られるのか?

    具体的なトレーニング方法も交えて、実践的な視点から解説していきます。

    以下動画でも解説しております。

    無酸素トレーニングとは?解糖系の仕組みと筋繊維の種類

    マラソントレーニングの多くは「有酸素運動」に分類されます。

    脂肪や糖質を酸素で燃焼させて、長時間にわたりエネルギーを供給する——これがマラソンの基礎であり、スタミナを鍛える基本的な考え方です。

    走り始めてすぐの段階は、この有酸素運動のみでどんどん記録が伸びていく傾向にありますよね?こうした時期を経験すると、無酸素トレーニングの必要性はないと感じる方は多いかと思います。

    一方で「無酸素トレーニング」とは、酸素を使わずに主に糖(グリコーゲン)を燃料として、短時間で大きな力を出すためのトレーニングです。

    100mの全力ダッシュや400mのレペティション、坂ダッシュのような高強度・短時間の運動がこれに該当します。

    この無酸素的なエネルギー供給システムは、「解糖系」と呼ばれています。

    解糖系では、酸素を使わずにグリコーゲンを分解してエネルギー(ATP)を生み出しますが、同時に乳酸も発生します。

    乳酸が蓄積すると筋肉が動きづらくなりますが、無酸素トレーニングを継続することで、この乳酸に対する「耐性(乳酸処理能力)」を高めることができます。

    このような無酸素トレーニングの効果を語るうえで、筋肉のタイプについても理解しておくと役立ちます。

    筋繊維は大きく3つに分けられます。

    タイプ特徴使用される場面
    Type 1遅筋/酸素を使って長く動けるLSD、Eペース、30km走などの持久走
    Type Ⅱa中間型速筋/ある程度の出力と持久力テンポ走、LT走、ペース走など
    Type Ⅱx高速筋/爆発的な力を出せるがすぐ疲れる坂ダッシュ、200〜400mのレペティション

    マラソンでは主にType Iが使われますが、後半に粘りを見せたり、ラストのスパートをかけたりする場面では、Type IIaやIIxの速筋が動員される場面も少なくありません。

    つまり、フルマラソンを走り切るには「遅筋を鍛えるだけでは不十分」であり、速筋も含めたトータルな出力の強化が求められるのです。

    この速筋を活性化させるために効果的なのが、無酸素的なトレーニングです。

    通常のジョグやロング走では使われにくい筋肉を目覚めさせることで、マラソン全体の出力の上限を引き上げることができます。

    無酸素トレーニングがマラソンに必要な理由

    「マラソン=有酸素運動」というイメージがあるため、無酸素的なトレーニングが必要と言われると、少し違和感を覚える方もいるかもしれません。

    しかし、マラソンを走り切るためには、単に長く走れるスタミナだけではなく、一定のスピードを保ち続けるための出力やフォームを支える筋力、そして“後半まで粘るための神経系の働きが欠かせません。

    ここでは、マラソンにおいて無酸素トレーニングが重要となる3つの理由を解説します。

    ・ 心肺と筋力の上限を引き上げる

    ・ 乳酸耐性を高め、スピード持久力を育てる

    ・ フォームを保ち、動きの質を支える

    といったところですが、以下で解説していきます。

    理由① 心肺と筋力の上限を引き上げる

    無酸素トレーニングは、VO₂max(最大酸素摂取量)や神経系・速筋繊維に強く働きかけることになり、

    これにより「これ以上速く走れない」という限界ライン自体を引き上げることができます。

    たとえば、普段のジョグが1kmあたり5分30秒の人が、無酸素トレを通じて出力の上限が上がれば、4分30秒のマラソンペースが相対的に「楽」に感じられるようになります。

    これは動きの余裕度にも繋がるので、マラソンにおける後半の粘りにも直結します。

    理由② 乳酸耐性を高め、スピード持久力を育てる

    高強度のトレーニングでは乳酸が多く発生しますが、繰り返し刺激を与えることで、乳酸の発生を抑える能力や再利用する能力(LT値)が向上します。

    この「スピード持久力」が育つと、後半に脚が止まりにくくなり、一定のリズムを保った走りが可能になります。

    特に、35km以降での「急激なペースダウン」は、この乳酸耐性や筋出力が足りないことによる現象であるケースが多く、スピード系の刺激を入れておくことで回避できるようになります。

    理由③ フォームを保ち、動きの質を支える

    無酸素トレーニングでは、筋肉を速く・大きく動かす動作が繰り返されるため、神経系の働き(脳から筋肉への命令伝達)が活性化されます。

    その結果、長時間の運動中でも効率的なフォームを保ちやすくなり、マラソン後半でも動きが崩れにくくなります。

    また、坂ダッシュや400mのインターバル走などでは、地面をしっかり蹴る感覚や、脚を引き戻す動きが鍛えられ、一歩の質が高まるのも大きなポイントです。

    これらの理由から、無酸素トレーニングは決してスプリンター向けのメニューではなく、フルマラソンを後半まで崩れずに走り切るための隠れた武器とも言えるのです。

    次は、その無酸素トレーニングを実際にどのように取り入れればよいのか、具体的なメニューと実践例をご紹介していきます。

    実際のトレーニング例と活用方法

    無酸素トレーニングの重要性は理解できたとしても、

    ・じゃあ、実際にはどんな練習をすればいいのか?

    ・距離も長いし、週に何回もできないのでは?

    といった疑問を持たれる方も多いでしょう。

    ここでは、市民ランナーでも無理なく取り入れられる具体的なトレーニングメニューと、その活用方法を紹介します。

    ① 400m × 8〜10(レペティション走)

    まずは400mのレペティション走です。

    目的としてはランニングフォームの強化・スピード持久力の向上です。

    設定ペースは自分の5kmレースペース〜やや速め(疾走区間)、レストは200mジョグ or 90秒ウォークです。

    200mでレストが短いと感じた場合にはもう少し開けてもよいでしょう。この場合疾走区間の走りに影響があっては効果が薄くなるので、リカバリーはしっかりとるべきです。

    フォームが崩れずにスピードを維持できるギリギリの距離が400m前後です。

    脚の切り替えや接地感覚を確認しながら行うと、マラソン中盤〜後半の動きにも良い影響を与えます。

    ② 1000m × 5〜6(インターバル走)

    次に1000mのインターバル走です。

    これはある程度ショートインターバルやレペティショントレーニングに慣れていないとうまくできないトレーニングです。

    私もシーズン序盤はできないことが多いです汗

    目的としてはVO₂maxの向上・心肺の限界突破、設定ペースは10kmレースペース程度、レストは400mジョグ or 2分といったところです。

    マラソンペースより速いスピードを維持しながら心肺に強い刺激を与えるメニューです。

    これを定期的に行うことで、マラソンペースが相対的に楽に感じられるようになります。

    ③ 坂ダッシュ(100m × 6〜8)

    次に坂ダッシュです。

    先に解説したレペティションやインターバルと比較して、坂を利用するので、最大速度に達する前に最大出力に達するので、ケガをしにくいというのがメリットです。

    目的としては脚筋力の強化・神経系への刺激、坂の勾配は5〜7%程度が理想、レストは下り歩きで十分回復してから次へといったところです。

    坂ダッシュは地面をしっかり蹴る感覚や、お尻まわりの筋肉(臀筋群)を使った走りを自然と習得できるメニューです。

    脚のパワーを高めるだけでなく、フォームの強化にも効果があります。

    ④ 30〜50mの流し(ウィンドスプリント)

    上記のトレーニングに入る前に取り組んでおきたいのがこのウインドスプリントです。

    目的としては神経系活性化・可動域の確認・フォームの洗練で、頻度はジョグ後やEペース走のあとに2〜4本程度がいいでしょう。

    いわゆる流しです。

    意外に軽視されがちな流しですが、これはレース後半に向けたフォーム維持力や、脚の切り替えの速さを鍛える重要な刺激になります。

    疲れていない状態で行うことで、神経系が最大限に活性化されます。

    無酸素的な刺激は「頻繁にやらなくても大丈夫」です。

    むしろ、ロング走と組み合わせることで、

    「長く走れる脚」と「速く動ける脚」の両方を鍛えるバランスの取れたマラソン体質が作られていきます。

    ロング走だけではダメなのか?

    マラソントレーニングにおいて、ロング走(30km走など)は確かに重要です。

    エネルギー消費効率の向上、脂肪燃焼の促進、メンタルの持久力強化など、マラソンに不可欠な要素を鍛えられるからですし、

    最初は驚くほどロング走だけで記録も伸びます。

    しかし、ロング走だけでは「後半までスピードを保つ力」が不足してしまうのが現実です。

    ・30km走は問題なくこなせるのに、本番では35kmからペースが急落する

    ・練習では余裕があるのに、レースではラスト5kmで脚が動かなくなる

    ・LSDやEペース中心で積み上げてきたが、記録が頭打ちになっている

    これらは、「距離は踏めているのに、出力の上限が足りていない」状態です。

    つまり、走り切るスタミナはあるのに、一定ペースを維持する筋持久力やスピード持久力が弱いということです。

    なぜロング走だけでは限界があるのか?

    ロング走では主に先に解説したType I(遅筋)が使われます。

    これは長く動き続けるには適していても、ペースを押し上げたり、後半でスパートをかけたりするには不十分です。

    また、ロング走では心肺や筋肉を「出し切る」レベルの刺激が入りづらいため、走力の上限そのものが伸びにくく、伸び悩みや停滞につながります。

    無酸素トレーニングは補完ではなく強化

    無酸素的なトレーニング(スピード刺激)は、あくまでロング走の代わりではありません。

    むしろ、「ロング走で培った持久力を、レース後半まで活かし切るための補強」であり、ロング走の効果を最大限に活かすにはスピード刺激が必要とも言えます。

    長く走れる脚と、速く動ける脚のどちらかだけでは足りません。

    毎週のロング走に加えて、月に数回でも無酸素トレーニングを取り入れることで、
    「35kmの壁」を乗り越える走力が手に入るはずです。

    まとめ

    マラソン後半の失速を防ぐためには、ロング走などの持久力トレーニングが欠かせません。
    しかし、ロング走だけで走力が完成するわけではないというのが、ここまでの話の核心です。

    無酸素トレーニングは、マラソン後半で粘るためのもう一段上の出力や、スピードを維持する神経系・フォームの精度、さらには乳酸への耐性を育てるスピード持久力まで、ロング走では届かない領域を補強してくれる存在です。

    特に「30km走はできるのに35kmから落ちる」と感じている人こそ、この短時間・高強度のスピード刺激を取り入れることで、明らかに走りが変わってくるはずです。

    月に数回でも構いません。

    400mのレペティション、坂ダッシュ、1000mのインターバル、流し——

    あなたの走力の上限を引き上げるスパイスとして、無酸素的な刺激を少しだけ加えてみてください。

    きっと次のレースでは、「落ちない自分」、「粘れる自分」に出会えるはずです。

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