トレイルランニングでは、登りや下りによって運動強度が大きく変化するため、心拍数はペースや身体の状態を把握するための一つの指標になります。
一方で、トレイルランニングはロードと比べて腕や身体の動きが大きく、GPSウォッチの手首式心拍計では正確に測定できないことがあります。
COROS(カロス)も公式サイトで、トレイルランニングでは上下動などの影響によって手首での心拍測定が難しくなることを説明しており、より安定した心拍データを取得する方法として上腕式の心拍センサーを紹介しています。
そこで気になるのが、
「上腕式の心拍センサーなら、実際のトレイルランニングでもしっかり心拍数を測れるのか?」
という点です。
今回はCOROSの上腕式心拍センサーを装着して、実際にトレイルランニングのレースを走ってきました。
登りや下りなどで運動強度が大きく変化するトレイルで、どのような心拍データが記録されたのか。実際のレースデータを確認しながら、装着感や使いやすさも含めてレビューしていきます。
なお、COROS心拍センサーの基本的な機能や使い方、ロードでの心拍データ比較については別の記事で詳しく紹介しています。
| 著者:千坂 充宏(SAMURAIGEL開発者) マラソンと並行してトレイルランニングに取り組み、ショートからロングレースまで幅広く出場しています。 主なレース実績 ・比叡山インターナショナルトレイルラン 50mile 6位 ・富士登山競走 山頂コース 3時間21分 ・各務原アルプストレイルランニングレース 優勝 ・別府大分毎日マラソン 2時間46分48秒 YouTube|マウンテンランニング研究所 |
トレイルランニングでは手首の心拍センサーが正確に測れないことがある

現在のGPSウォッチには、手首で心拍数を測定できる光学式心拍センサーが搭載されているものが多く、普段のランニングで活用している人も多いと思います。
私自身も日頃のランニングでは心拍数を一つの指標としており、強度の低いジョギングではGPSウォッチに搭載された手首式の光学式心拍センサーを使用しています。
一方で、インターバル走や閾値走などのポイント練習では、最近はより安定した心拍データを取るために上腕式心拍センサーを使用しています。
そして、手首での心拍測定が難しくなりやすいのがトレイルランニングです。
トレイルでは路面が一定ではなく、登りや下り、岩場などに合わせて身体の動きが大きく変化します。急な登りでは腕を大きく振ったり、場合によっては手を使ったりすることもあります。
下りでもバランスを取るために腕を大きく動かすため、一定のフォームで走りやすいロードとは腕の使い方が大きく異なります。
COROS公式でも、トレイルランニングでは上下動などの影響によって、GPSウォッチに搭載された光学式心拍センサーでは正確な心拍数を測定することが難しくなる場合があると説明しています。
そこで選択肢になるのが、手首ではなく上腕部に装着する心拍センサーです。
今回はCOROSの上腕式心拍センサーを装着して、志賀高原100の40kmの部を実際に走りました。
登りや下りが連続し、運動強度や身体の動きが大きく変化するトレイルレースで、上腕式心拍センサーはどのようなデータを記録できたのか。
実際に取得した心拍データを確認しながら検証していきます。
上腕式のCOROS心拍センサーとは?
実際のレースデータを確認する前に、今回使用したCOROS心拍センサーについて簡単に紹介します。
COROS心拍センサーは、
腕にバンドを巻いて使用する上腕式の心拍センサーです。
GPSウォッチに搭載されている光学式心拍センサーと同じように、光を利用して血流の変化を読み取り、心拍数を測定します。
大きな違いは、心拍数を測定する位置です。
GPSウォッチでは手首から心拍数を測定しますが、COROS心拍センサーは上腕部に装着して測定します。
トレイルランニングでは登りや下りによって腕の動きが大きく変化するため、手首よりも動きの影響を受けにくい上腕部で測定できることは大きなメリットです。
また、胸部に装着するタイプの心拍センサーと比べて装着しやすく、長時間身体を動かし続けるトレイルランニングでも使いやすいと感じています。
COROS心拍センサーはBluetoothに対応しているため、COROSのGPSウォッチだけでなく、対応するGarminなどのGPSウォッチと接続して使用することも可能です。

私自身はGarminのGPSウォッチと接続し、ポイント練習などでCOROS心拍センサーを使用しています。
COROS心拍センサーの詳しい機能や使い方、GPSウォッチとの心拍データの比較については、以下の記事で詳しくレビューしています。
COROS上腕式心拍センサーを志賀高原100で使ってみた
ここからは、COROS上腕式心拍センサーを実際のトレイルランニングで使用したデータを確認していきます。
今回使用したのは、2026年8月に開催された「志賀高原100」の40kmの部です。
志賀高原100の40kmは、トレイルランニングのレースとしては全体的に走れる区間が多いコースです。
途中にはゲレンデを逆走するような厳しい登りが2回ほどありますが、それ以外の登りについては、走力があればランニングで進める区間も多くあります。
そのため今回のレースでは、急な登りをパワーウォークで進むだけでなく、緩やかな登りを走ったり、下りでスピードを上げたりと、レース中に身体の動きや運動強度が大きく変化しました。
さらに、レース当日はかなりの雨。

トレイルは全体的にぬかるんでおり、普段であれば走りやすい区間でも足を取られる場面が多くありました。
ペースを上げようとしても路面状況によって余計に体力を使うため、単純な走行ペースだけでは実際の運動強度を判断しにくいコンディションだったと思います。
こうした状況で、スタートからフィニッシュまでCOROS心拍センサーを上腕部に装着し、GPSウォッチと接続して心拍数を記録しました。
登りや下りによる運動強度の変化だけでなく、雨やぬかるみによって身体の動きも大きく変化する中で、どのような心拍データが記録されたのか確認していきます。
レース中の心拍数は自然な変化を記録できた
実際に志賀高原100の40kmで記録したデータがこちらです。

今回の走行距離は43.84km、走行時間は4時間44分22秒。累積上昇量は1,776mとなりました。
この時のデータは時計を止め忘れてしまったので、実際は4時間43分でした。
レース全体の平均心拍数は148bpm、最大心拍数は163bpmです。
心拍グラフを確認すると、レース中はおおむね140〜160bpmの範囲で推移しており、コースや運動強度の変化に合わせて細かく上下していることが分かります。
大幅に心拍が下がっているところは3か所あるエイドですね。

これまでGPSウォッチに搭載された手首式の光学式心拍センサーをトレイルランニングで使用した際には、体感的にはかなり追い込んでいるにもかかわらず心拍数が低く表示されたり、反対にそれほど強度を上げていない場面で高い数値が表示されたりすることがありました。
今回COROSの上腕式心拍センサーで記録したデータでは、そのような明らかに違和感のある心拍数はほとんど見られませんでした。
もちろん今回は胸部に装着する心拍センサーなどとの同時計測ではないため、数値そのものの誤差を検証したわけではありません。
それでも実際のレース中の体感強度と照らし合わせると、運動強度の変化をかなり自然に捉えていたと感じます。
また、今回のデータを見るうえで面白いのが、ペースや高低差だけでは心拍数の変化を説明できない部分があることです。
志賀高原100の40kmは比較的走れるコースですが、レース当日は雨によってトレイルの多くがぬかるんでいました。
同じような傾斜やペースで走っていても、ぬかるんだ路面では足を取られないように身体を支えたり、滑らないように細かく動きを調整したりする必要があります。
そのため、ペースだけを見るとそれほど速くない区間でも、実際にはかなり体力を使っている場面がありました。
こうしたトレイル特有の負荷まで含めて身体にかかっている運動強度を確認できるのは、心拍データを取る大きなメリットだと感じます。
ちなみに、今回の志賀高原100の40kmを実際に走っている様子はYouTubeでも撮影しています。雨でぬかるんだ路面や実際のコースの様子も確認できますので、よかったらあわせてご覧ください。
ペース・高低図と心拍データを比較
今回の心拍データをペースや高低図と比較すると、トレイルランニングならではの特徴が見えてきます。
まずレース全体を見ると、ペースはコース状況によって大きく上下しています。

走れる区間ではペースが大きく上がる一方、急な登りや路面状況の悪い場所では大きくペースが落ちています。
それに対して心拍数は、ペースほど激しく上下しているわけではなく、レースの大部分で140〜160bpm程度を推移しています。

つまり、ペースが大きく落ちているからといって、必ずしも身体への負荷が低くなっているわけではありません。
これは特にトレイルランニングでは重要なポイントだと思います。
今回の志賀高原100は雨によって路面がかなりぬかるんでいました。

ぬかるんだ路面ではスピードを出すことが難しく、滑らないように踏ん張ったり、バランスを取ったりしながら走る必要があります。
そのため、ペースだけを見るとゆっくり走っているように見えても、実際にはかなり体力を使っている場面があります。
高低図と比較しても、心拍数の変化は単純に「登りだから高い、下りだから低い」となっているわけではありません。

例えばレース後半には、標高1,600m付近から最高地点となる1,975m付近まで一気に登る区間があります。
この大きな登りでは150bpm前後の比較的高い心拍数を維持し、その後の長い下りでは140bpm前後まで心拍数が低下しています。
大きな地形の変化に対しては、実際の運動強度に合わせた自然な心拍数の変化が確認できます。
一方で、標高が低くなった区間でも再び150bpm前後まで心拍数が上昇している場面があります。
こうした部分を見ると、心拍数は高低差だけではなく、実際の走行強度や路面状況などによる身体への負荷も反映していることが分かります。
また、4時間44分という長時間のレースでありながら、後半になって心拍数が極端に低い状態で推移しているわけではありません。
終盤でも150bpm前後まで上昇する場面があり、最後まで一定以上の運動強度を維持して走れていたことも心拍データから確認できます。
今回のデータを見ると、トレイルランニングでは「ペース=運動強度」とは限らないことがよく分かります。
登りや下りだけでなく、路面状況や走り方によっても身体への負荷は変化します。
そのため、ペースや高低図だけでなく心拍数も一緒に確認することで、実際にどの程度の強度で走っていたのかをより把握しやすくなります。
今回COROSの上腕式心拍センサーを使用したことで、こうしたトレイル特有の細かな運動強度の変化も含めて、レース全体を振り返ることができました。
トレイルランニングで使って感じたメリット
今回、COROS上腕式心拍センサーを志賀高原100でスタートからフィニッシュまで使用しました。
実際に長時間のトレイルランニングで使用してみて感じたのは、心拍データだけでなく、装着のしやすさという点でもトレイルランニングとの相性が良いということです。
長時間装着していても気になりにくい
今回のレース時間は4時間44分ほどでしたが、レース中に心拍センサーの存在が気になることはほとんどありませんでした。

上腕部にバンドを巻いて固定するだけなので、一度装着してしまえば走っている最中に位置を調整する必要もなく、そのままレースに集中できます。
トレイルランニングではザックを背負ったり、多くの装備を身につけたりするため、できるだけ身体にストレスを感じるものは減らしたいところです。
その点、上腕式心拍センサーは比較的取り入れやすいと感じました。
腕の動きが大きいトレイルでも使用できた
トレイルランニングでは、ロードと比べて腕の動きがかなり大きくなります。
登りでは腕を大きく振り、下りではバランスを取るために腕を広げることもあります。
さらに今回は雨で路面がぬかるんでいたため、身体のバランスを崩したり、滑らないように普段とは違った動きをしたりする場面も多くありました。
それでもレースを通して心拍データを記録することができ、長時間にわたって明らかに不自然な数値が続くような場面もほとんど見られませんでした。
手首式の光学式心拍センサーで心拍数が安定しにくいと感じている人にとって、上腕式は一つの選択肢になると思います。
胸部に装着する必要がない
心拍数をより正確に測定したい場合、胸部に装着するタイプの心拍センサーを使用する方法もあります。
ただ、長時間のトレイルランニングでは、胸部にセンサーを巻き続けることに抵抗がある人もいると思います。
COROS心拍センサーであれば上腕部に装着するだけなので、胸部にバンドを巻く必要がありません。
「GPSウォッチの手首式より安定した心拍データを取りたいけれど、胸部にセンサーを装着して長時間走るのは避けたい」
という人にとって、上腕式心拍センサーは使いやすい選択肢だと感じました。
トレイルランニングで使って感じたデメリット・注意点
今回、志賀高原100の40kmでCOROS上腕式心拍センサーを使用しましたが、レース中に大きなトラブルはありませんでした。
雨の中で4時間以上使用しても心拍データを記録でき、装着していることが大きなストレスになることもありませんでした。
一方で、実際に使用するうえではいくつか注意しておきたい点があります。
GPSウォッチとは別に装着する必要がある
当然ですが、上腕式心拍センサーを使用する場合は、GPSウォッチとは別にセンサーを装着する必要があります。
普段のジョギングであれば、GPSウォッチに搭載された手首式の光学式心拍センサーだけでも十分な場面は多いと思います。
私自身も強度の低いジョギングでは手首式の光学式心拍センサーを使用し、
ポイント練習や今回のように心拍データをしっかり記録したい場面で上腕式心拍センサーを使用しています。
すべてのランニングで必要というよりも、目的に応じて使い分けるのがいいと思います。
装着位置や締め付けは確認しておきたい
上腕式心拍センサーは、適切な位置に装着して使用する必要があります。

バンドが緩すぎれば走っている途中でズレる可能性がありますし、反対に強く締めすぎれば長時間のトレイルランニングではストレスになる可能性があります。
レース当日に初めて使用するのではなく、普段のランニングやトレーニングで何度か使用し、自分に合った装着位置や締め付け具合を確認しておくと安心です。
レース前に接続と充電を確認する
外部の心拍センサーを使用する以上、GPSウォッチとの接続やバッテリー残量についても事前に確認しておく必要があります。
特にトレイルランニングでは競技時間が長くなるため、スタート前に充電状態を確認しておくことは重要です。

また、GPSウォッチ側がCOROS心拍センサーを認識しているかについても、スタート前に確認しておくと安心です。
今回の志賀高原100では接続が途切れるなどの問題はなく、スタートからフィニッシュまで心拍データを記録することができました。
トレイルランニングで心拍数をどう活用する?
ロードランニングでは、1kmあたりのペースを見ながら運動強度を調整することができます。
一方、トレイルランニングでは登りや下りによってペースが大きく変化するため、ペースだけを見て運動強度を判断することは難しくなります。

今回の志賀高原100でも、ペースが大きく落ちているにもかかわらず、心拍数はそれほど低下していない場面がありました。
特に雨でぬかるんだ路面では、スピードが出ていなくても滑らないように踏ん張ったり、バランスを取ったりすることで体力を使います。
こうしたペースには表れにくい身体への負荷を確認できることが、トレイルランニングで心拍数を活用するメリットの一つです。
登りで運動強度を上げすぎないための目安になる
トレイルレースでは、序盤の登りで頑張りすぎてしまうと、後半に大きくペースを落とす原因になります。
特に急な登りでは、走るスピード自体は遅くても心拍数が大きく上昇することがあります。
そこで心拍数を確認しておけば、自分では余裕を持っているつもりでも、実際には想定以上の強度になっていることに気づくことができます。
もちろん心拍数だけを見てレースをする必要はありませんが、長時間のトレイルレースでオーバーペースを防ぐ一つの指標として活用できます。
ペースでは分からない身体への負荷を確認できる
今回の志賀高原100のように路面状況が悪い場合、ペースだけを見ても実際の運動強度が分からないことがあります。
同じ6分/kmでも、走りやすい林道とぬかるんだトレイルでは身体への負荷は大きく異なります。
さらに登り、下り、路面状況、疲労など、さまざまな要素によって運動強度は変化します。
こうした状況でも心拍数を記録しておけば、ペースや高低図と組み合わせることで、そのとき身体にどの程度の負荷がかかっていたのかを振り返りやすくなります。
レース後の振り返りにも活用できる
個人的には、レース中のペース管理だけでなく、レース後の振り返りにも心拍データは活用できると感じています。
今回もペース、心拍数、高低図を重ねて確認することで、「この登りではどの程度の強度だったのか」「ペースが落ちた区間でも身体には負荷がかかっていたのか」といったことを確認できました。
トレイルランニングでは、タイムや平均ペースだけではレース内容を判断することが難しい場合があります。

だからこそ、心拍数も一緒に記録しておくことで、レース中の運動強度をより詳しく振り返ることができます。
そのためにも、長時間のトレイルランニングで安定した心拍データを記録できることには大きな意味があると感じました。
まとめ
今回はCOROS上腕式心拍センサーを使用して、志賀高原100の40kmを実際に走ってみました。
トレイルランニングでは登りや下りによって腕の動きが大きく変化するため、GPSウォッチに搭載された手首式の光学式心拍センサーでは、心拍数をうまく測定できないことがあります。
私自身もこれまで、トレイルランニングで手首式の光学式心拍センサーを使用した際に、体感強度に対して心拍数が明らかに低かったり、反対に高すぎたりすることがありました。
今回COROS上腕式心拍センサーを使用したところ、4時間44分という長時間のレースでも、全体を通して大きな違和感のない心拍データを記録することができました。
特に今回の志賀高原100は雨で路面がぬかるんでおり、ペースや高低差だけでは実際の運動強度を判断しにくいコンディションでした。
心拍データも一緒に確認することで、ペースが遅くても身体には負荷がかかっていた区間や、登り・下りによる運動強度の変化など、レース内容をより詳しく振り返ることができます。
もちろん今回の検証では、胸部に装着する心拍センサーとの同時計測を行っているわけではないため、数値そのものの誤差を検証したものではありません。
それでも、実際の体感強度やコース状況と照らし合わせる限り、COROS上腕式心拍センサーはトレイルランニングでも十分活用できると感じました。
手首式の光学式心拍センサーでは心拍データが安定しない、胸部に心拍センサーを装着して長時間走るのは避けたいという人にとって、上腕式心拍センサーは選択肢の一つになると思います。
トレイルランニングでも心拍数をトレーニングやレースの振り返りに活用したい人は、ぜひ参考にしてみてください。
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